信毎「日本が他国との連携を断ち切って中国に懇願すれば尖閣問題は解決する」

 2014年12月31日付けの信濃毎日新聞の社説は尖閣問題を扱っていました。以下全文引用します。

緊張続く尖閣
衝突回避の仕組みを急げ


 沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との緊張緩和は、来年に持ち越す大きな政治課題だ。まずは不測の事態を避ける仕組みづくりを急がねばならない。
 「海上連絡メカニズム」の早期運用開始に向け、政府は来年1月にも実務者協議を開きたいとの以降を中国に打診した。二中双方の防衛当局が緊張時に連絡を取り合うものだ。中国は「調整する」とし、日程は確定していない。
 協議を進める方針は、安倍晋三首相と習近平国家主席が11月に会談した際、確認している。首相が海上連絡メカニズムの重要性を強調したのに対し、習氏は「事務レベルで意思疎通を継続したい」と応じたとされる。
 首脳会談後も尖閣周辺では、にらみ合いが続いている。中国の海警局の船が領海外にある接続水域を航行し、領海にも侵入した。沖縄県周辺を軍用機が飛行し、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)してもいる。
 過去には、中国艦船が東シナ海で海上自衛隊の護衛艦に射撃管制用レーダーを照射するという問題があった。中国軍機と自衛隊機の異常接近も起きている。
 偶発的な衝突が起きれば、日中関係は危機的な状況になる。東アジア全体の安定も損なう。絶対に避けねばならない。
 協議は尖閣国有化後、中国が話し合いを拒み、中断した経緯がある。これまでに3回開かれており▽あらかじめ決めた無線の周波数を使って連絡を取り合う仕組みをつくる▽防衛省と中国軍当局の幹部間にホットラインを設置する―などで合意している。
 運用が始まれば、艦艇同士や航空機同士、艦艇と航空機の間で緊急連絡が取れるようになる。早く道筋を付ける必要がある。
 メカニズムができれば済む問題ではない。一方で、中国に領海侵入をやめるよう申し入れるなど対話の努力を重ねることも求められる。「中国包囲網」を意識した外交でけん制を続けるようでは反発を招きかねない。
 緊張緩和には、さまざまな分野での交流や協力も大事になる。先ごろ「日中省エネルギー・環境総合フォーラム」が2年ぶりに北京で開かれたことは歓迎できる。両国の政府と民間企業が環境分野での協力について話し合う場だ。関係悪化で中断していた。
 安倍政権は、2010年を最後に途絶えている閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」の再開へ環境整備も進める。関係改善に一層の努力を傾けてもらいたい。  (太字引用者)


要約すると、

  • 日本政府は不測の事態を避けるために「海洋連絡メカニズム」の早期運用を目指しているが、中国は協議に積極的でない。
  • 中国はいまだに領海侵入を繰り返し、過去には射撃管制用レーダーまで照射している。
  • 偶発的な衝突が起きれば日中関係どころか東アジア全体の安定を損なう。
  • 安倍政権の「中国包囲網」は中国の反発を招きかねない(からやめるべきだ)。
  • 日本はメカニズムの構築だけでなく、領海侵入をやめるよう申し入れるなど対話を続けなければならない。
  • 緊張緩和のためには、さまざまな分野で積極的に交流や協力を行うことも重要だ。

 尖閣をめぐって挑発してきているのは中国側であること、中国は衝突回避のための仕組みづくりに後ろ向きであることを認めながら、その対策として信毎が日本政府に提言しているのは「中国以外の国々との協力を取りやめる」「領海侵入をやめてくれとお願いする」「さまざまな分野で中国への協力(=便宜)を図る」の3つです。
 またしても「日本がパンツを脱げばすべて解決する」という、サヨク(ていうかハト派?)の皆さんのお花畑思考が全開です。

 外交というものは一筋縄でいかないものですが、世界三位の軍事力、世界二位の経済力、世界一のプライドの高さを持つ中国を相手にする場合には、一層のしたたかさ、粘り強さが必要になります。物理的な力では劣らざるを得ない日本としては、問題意識を共有する他国と連携するのは当然ですし、"不測の事態"に備えてそれなりの覚悟と準備をするのは当然のことです。
 日本が米・豪・印・比などと安全保障面で連携を深めようとしているのに対し、中国が反発する理由は、一対一なら日本を好きなように料理できると考えているからです。だからこそ戦後70年も経った今ごろになって南京大虐殺などを持ちだして日本の国際的イメージを失墜させようと躍起になっているわけで。
 そんな国の思惑通りに日本が周辺国との連携を断ち、国際的に孤立した状況で「領海侵入をやめてください!」と言ったところで、中国様が言うことを聞いてくれるわけがないじゃないですか。そういうのは対話とは言いません。ただの無力な"懇願"です。

 信毎さんは「不測の事態は絶対にあってはならない」というばかりで、もし不測の事態になってしまった場合の備えをどうするかについてはまったく触れていません。原発問題ではあれだけ危機管理にうるさいのに。
 安倍政権の「中国包囲網」は、もし不測の事態を引き起こせば中国も無事ではすまないぞというけん制です。それを日本がみずから放棄するのは、中国が尖閣で一線を越えるためのハードルをわざわざ引き下げてやる行為です。
 信毎さんは特定秘密保護法に対してはあれだけ疑り深いのに、どうして対特亜外交になるといきなり無邪気になっちゃうんですか? 民主的に選ばれた自国の政権の言うことやることは信じないくせに、どうして汚職まみれの一党独裁国家の前では無防備になれるんですか? そりゃサヨク新聞なんだから当たり前じゃんと言われればそれまでですが。

 日本のサヨクさんたちのこういう外交音痴はどこから来るんでしょうね。彼らは日本が中国の影響下に降ることを本気で望んでいるのでしょうか。でもいまの中国は貧富の差が激しくとても共産主義とは呼べない社会ですから、日本の左翼が憧れを抱く存在とも思えません。
 やっぱり彼らの心の底には「日本は潜在的な侵略国家である」という卑屈な自国観があるのでしょう。だから自国の防衛や他国へのけん制にどうしても後ろめたさを感じてしまう。すべては対話で解決すべきであり、もしそれが不可能ならば日本の国益が損なわれるのもやむをえない、だってわれわれは先の大戦で償いようのない原罪を負った戦犯国なのだから――。
 そういう自虐はマゾ気質の人には快感であり、政敵を攻撃するツールとしても便利なのでしょうが、わたしは一読者および一国民として言いたいですね。「もう勘弁してください」と。

 そういえば、安倍首相は今年は靖国神社には参拝しませんでした。サヨクも特亜もこの話題を肯定的に評価してしかるべきだと思うのですが、信毎も中韓メディアもとくに取り上げていないようです。総選挙で与党に圧勝されムシャクシャしている時期に政権に塩を送るような報道はしたくなかったのかもしれませんが、安倍首相のバランス感覚を理解するうえでけっこう注目すべき事実だと思うんですけど。
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テーマ : 中国問題
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尖閣戦争に利用される敵国条項と憲法9条

 チャイナネット(中国網)は挑発的な日本批判の記事があるかと思えば軍事関係やお色気関係の写真特集があったりして、男子にとっては楽しいサイトです。どう見ても著作権無視な写真を掲載していることも多く、いかにも中国らしいです。
 7月25日付けの「『普通の国』になれない日本」と題した論説も、中国らしさ全開でした。

http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2014-07/25/content_33057348.htm


「普通の国」になれない日本

 すべての国はその大きさにかかわりなく平等で、すべての国は普通の国(正常な国家)になることができる――。理論上、こう言えることが、日本については例外となる。なぜであろうか?

 理由は明白である。第二次世界大戦を引き起こした国であり、人類史上極めて重い罪を犯したからである。
(中略)

 確かに日本は戦後、国際社会の優等生であり、経済は急速に回復し、社会も安定した。よく言われるように、日本人は自ら苦労して幸福を手に入れ、他国に飢餓や戦争などの被害をもたらしていない。その点まじめな国である。

 しかし、歴史問題における態度が他国に与えるイメージは、表面上のまじめな学生ではなく、かつての不良少年の姿である。

 歴史問題において、日本は決して優等生ではない。歴史教科書改訂、靖国神社参拝、南京大虐殺の否定、戦争慰安婦の連行否定――など。これら日本の右翼政治家たちの言動を前にして、かつて日本の軍国主義に苦しめられた隣国が、どうして「日本が普通の国に向かっている」などと思えようか。

 侵略の歴史を否定する日本はいま、安倍政権の政策の下、「平和憲法」の束縛を急速に取り払い、海外派遣の道を切り開き、普通の国になろうとしている。このような日本の意図に対して、われわれは警戒心を持たざるを得ない。
(中略)

 日本が歴史問題・領土問題において十分な誠意を示すことができず、さらに実際の行動で、過去の軍国主義思想を断ち切るものでなければ、「日本が普通の国になる」というのはただの空想に過ぎなくなるであろう。


 日本は過去に人類史上最悪の罪を犯したのだから、国際社会において平等に扱われる権利がない。
 いやー、この傍若無人な論旨展開、すがすがしいくらいですね。70年前のことをひたすら騒ぎたて、現在自分たちに注がれているさまざまな非難の視線をかき消そうという悪あがき。それを恥じようともしないおおらかさは、さすが4000年の歴史を誇る大国ならではです。
 ……などと皮肉を言っている場合ではありません。国権が制限されてしまえば、結果的に日本国民の人権すら制限されてしまうことになります。そのうえ、この論説は末尾にさらりと領土問題を混ぜ込んできました。尖閣問題で譲歩しなければ、日本の「普通の国」としての権利を永遠に認めない、と脅しをかけているのです。

 国連憲章は集団的自衛権について次のように述べています。

第51条〔自衛権〕
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。


 中国は安保理常任理事国のくせに、なぜこの51条を否定するような国内言論を許しているのでしょうか。その背景には、やはり国連憲章の「敵国条項」があるのでしょう。

第53条〔強制行動〕

  1. 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。

  2. 本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

 「強制行動」というのは要するに武力行使、「地域的取極」「地域的機関」というのは各国が締結・加盟している安保条約や軍事同盟(NATOなど)のことをいうのでしょう。つまり、各国が集団として戦争を始めるときには安保理の許可が必要だけど、第二次世界大戦で連合国の敵だった国が新たな侵略を行おうとした場合には、許可がなくても武力行使していいですよ、という意味ですよね。たぶん。

 現在の中国は、べつに日本がまた中国大陸を侵略しにくるなんて本気で信じてるわけではないでしょう。彼らの一番の関心は尖閣諸島であり、彼らは自己正当化のために国連憲章を巧みに利用しようとしているのです。
 彼らの主張は以下の流れに沿っています。

①尖閣諸島は日本が清から奪ったものである

②カイロ宣言は日本に対して清から奪った島々を返還せよと要求している

③日本が受諾したポツダム宣言はカイロ宣言の履行を要求している

④日本による尖閣諸島の占有はポツダム宣言に反しており、国連憲章53条のいう『敵国における侵略政策の再現』にほかならない

⑤ゆえに尖閣奪還のために日本を攻撃することは国際法上も正当な行為である
関連記事 尖閣問題――中国側の主張を検証する

 中国がやたらと歴史問題を騒ぎ立て「日本が軍国化している!」と触れ歩いているのは、中国側の先制攻撃で「尖閣戦争」が勃発した場合の責任を日本になすりつけるためと受け取れます。武力行使にあたって、法的根拠や国際世論は重要です。もし下手を打って国連で非難決議でもされようものなら、世界中から経済制裁を受けて戦争以上のダメージを食らうことになるからです。
 そういう意味で、中国以上に反日に入れ込み日本の国際評価をおとしめようとしている韓国は、日本にとっては限りなく敵性国家に近い存在です。ソウル市民が習近平を「尖閣は中国の土地」と書いた横断幕で歓迎したり、最高級ホテルが自衛隊の式典を拒否して人民解放軍の式典を歓迎したりしていますから、韓国世論も日本をしっかり敵と認識しています。

 ただし中国がいくら韓国と共闘し理論武装に励んだところで、実際に世界世論を味方につけることができるかは別問題です。1991年の国連総会決議により、敵国条項は死文化していることが国際的な共通理解となりました。そんなものを武力行使の正当化のために引っ張り出してきたら、中国は多くの国連加盟国から総スカンを食らうことでしょう。まして、尖閣諸島を日本から奪うのはサンフランシスコ講和条約を土台とする戦後のアジア秩序を破壊する行為なのです。

 ポツダム宣言では、日本の主権が及ぶ離島(沖縄も含む)の範囲は連合国側が決めるとしています。現在の日本が尖閣を実効支配しているのは、連合国の中心である米国がそれを認めたからです。けれど米国は、尖閣諸島における日本の施政権は認めても領有権については「オレ知らね」という態度です。
 中国(共産党)や台湾(国民党)にしてみれば、「アメリカが判断を放棄したんなら、次に優先されるべきなのはオレたちの意見だろ? だってオレたち連合国側なんだから」とつけ込む隙ができたわけです。
 安倍政権が尖閣防衛のために日米同盟の強化を急いでいるのは、単に軍事的後ろ盾がほしいだけでなく、米国が尖閣問題の当事者であり、火種を撒いた張本人だからという理由もあるでしょう。

 米国は、いざその種が弾けて火事になった時どうするでしょうか? 中国が一気に尖閣諸島を制圧した場合、「日本の施政権が及ばなくなったからもう日米安保の対象外」などと屁理屈をこねて日本を助けてくれない――なんてことになったら目も当てられません。だから安倍さんはリスクを冒してでも集団的自衛権の封印を解き、米国に「裏切るなよ」とプレッシャーをかけているわけです。

 日本の憲法9条は、額面通りに読めば防衛のための交戦だって認めていません。尖閣有事の際に自衛隊が出動すれば、中国側は必ずその矛盾を突いて自己正当化の方便に利用するでしょう。「平和を願う日本国民のために、違憲的存在である自衛隊を撃滅する」くらいのことは言いかねません。なにしろ「日本は戦犯国だから永遠に国権を制限されるべき」なんて平気で言う国なのです。
 戦争放棄・戦力不保持なんてファンタジーな憲法を制定させられちゃったせいで、ささいな変化でも「軍国化だ!」と吹聴され、厄介なオトナリの国に領土侵食の口実を与えてしまっているこの皮肉な現状。改憲しようが解釈変更しようが難癖つけられることには変わりないんだから、中韓との関係がどん底になっている今はむしろ、憲法改正のチャンスだと思うんですけどね。

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尖閣問題――中国側の主張を検証する

中国側の主張

 中国の主張は以下の通りです。
(要約元:中国大使館

  1. 釣魚島を中国人が先に発見し利用してきたのは古文書などから見ても明らかだ。釣魚島の先、久米島からが琉球であると記した地誌もあり、江戸時代の日本人学者(林子平)なども釣魚島が中国側に属すると認めている。

  2. 明治政府は日清戦争で勝つことが明らかになったタイミングでこれらの島を沖縄県に編入した。これは不法な窃取である。

  3. カイロ宣言では、「満州、台湾、澎湖島など日本が清から盗みとった地域を中華民国に返還せよ」と日本に要求している。上記2により、釣魚島も返還対象に含まれる。

  4. ポツダム宣言では、「日本はカイロ宣言の条項を履行しなければならない」「日本の主権は本州四国九州北海道および連合国が決定する島々に限る」としており、日本はこれを受諾した。

  5. 米国は釣魚島を含む沖縄を信託統治し、のちにこれを「返還」したが、その根拠となったサンフランシスコ平和条約に中華人民共和国は参加しておらず、この平和条約および米国の行いは不法かつ無効である。


 この論とほぼ同じ主張をしているのが孫崎享氏。
「連合国(というか米国)が尖閣諸島の主権について明確な判断をしていない以上、尖閣諸島に日本の主権があるかどうかは明確でない。だから中国側の要求を受け入れて『棚上げ』するしかないだろう」
――というような論旨です。(要約元
 素朴な印象としては、戦後68年も経っていまごろカイロ宣言とかポツダム宣言とか、なにゆってんの。あんたらバカあ? ・・・と言いたくなりますが、頭ごなしに罵倒しても意味がないので、素人なりに検証(実質的には反論)してみましょう。まあほとんどはウィキペディアとかからの受け売りですけど。

わたしなりの反論


1について――古文書とかそういうものにどれほど意味があるのか?


 国の領土なんてものは、時代ごとに変化するのが当たり前です。とくに人が住んでいない無人島ならなおさらでしょう(そういう意味では孫崎氏が言うように、日本もよく使う「我が国固有の領土」という表現はあまり中身がありません)。
 そもそも、台湾自体が明代以前は「琉球」と呼ばれて沖縄と区別されていませんでした。となると台湾が歴史的にみて「中国固有の領土」なのかどうかは議論の余地があります。いまですら実質別の国なのに。
 清代に入っても、たとえば宮古島島民が台湾で原住民に殺された際、清は日本に対して「化外の地だから知らねえよ」と言い逃れしています(牡丹社事件、1871)。
 台湾すらこの有り様なのですから、その先の絶海の無人島なんか話になりません。尖閣諸島は昔から無人島だったのですから、琉球王朝がそれを自国の領土と認識していなかったのも無理はありません。だからといってそのまま清の領土になるわけでもない。はっきりいって「どっちもどっち」です。
 問題は、現在の領有が近代法や国際常識に照らしあわせて妥当なものかどうかです。

2について――日本が清から尖閣諸島を奪ったという主張は妥当なのか?


・日本政府は、尖閣諸島を沖縄県に正式に編入(1895)するよりもずっと前から同諸島を調査しており、古文書の記述はともかくその当時中国人がその島を利用していなかったことを確認していました。
 古賀辰四郎に代表されるように、尖閣諸島を本格的に開拓しようとしたのは日本側が先です。これは日清戦争よりも10年近くも前からでした。
 日本のこうした動きは清側にも伝わっていた(「申報」1885年9月6日記事)のに、清国政府は何の対応もしませんでした。当時は清の軍事力が日本を圧倒していた時期だったにもかかわらず、です。
 武力を用いたわけでもなく、隣国から異論が出たわけでもない編入を「侵略」「窃取」と呼ぶのは無理があるような気がします。

・日本が尖閣編入にあたり、日清戦争の戦況を見ながら慎重にタイミングを図ったのは確かでしょう。ここは日本にとって最大のネックです。でも逆に、当時の日本はそれほど弱い国だったとも言えます。古賀の請求を受けて日本政府が尖閣諸島を調査している間、清軍はたびたび日本を威嚇していました。長崎事件(1886)では清の北洋艦隊が長崎に上陸して狼藉を繰り返し、朝鮮でも日本が支援する甲申政変(1884)が清に潰され日本人が殺されるなどしていたのです。
 当時の清は日本に劣らず「軍国主義」的でした。日清戦争で日本が勝った時、世界は「弱小日本が眠れる獅子を打ち負かした」と驚くほどでした。
 そうした状況下で、日本が尖閣編入の時期に慎重になるのは当然です。正当な編入であっても、それがきっかけになって戦争が早期に勃発しようものなら、日本は清に敗れるおそれもあったのですから。
 まあ要するに「どっちもどっち」だったわけです。

3、4について――カイロ宣言やポツダム宣言をどう解釈すべきか?


 ひとつことわっておくと、カイロ宣言は連合国側の対日行動方針であり、国際条約とかそういうものではありません。ポツダム宣言はカイロ宣言の履行を日本に求めましたが、両宣言では台湾や澎湖島を除き、具体的にどの島を日本が手放すべきかは定義していません。そして中華人民共和国は両宣言に関わっておらず、日本の主権が及ぶ範囲を勝手に決める権限がありません。どうしても尖閣諸島が欲しければ、領有権を認めてくれと米英に土下座するのが筋でしょう。
 しかし中国には気の毒なことに、サンフランシスコ平和条約に基づいて尖閣は沖縄の一部としてアメリカの委任統治下に入り、その後日本に返還されました。これにより、ポツダム宣言のいうところの連合国側の判断は下されたと考えるのが常識的です。

5について――サンフランシスコ平和条約と、それに基づく米国の沖縄統治は不当なものなのか?


  • 同条約を否定することは、戦後の国際秩序の根幹を否定することです。敗戦国日本は同条約を遵守する義務を負っており、これを否定する中国の主張とは根本的に相容れません。

  • 尖閣諸島を含む沖縄を日本に返還したのは米国です。文句があるなら米国に言ってほしいものです。

  • 終戦から1970年前後までの20年以上にわたり、中国は尖閣の領有権を主張してきませんでした。人民日報の紙面(1953)や公的機関の地図(1965)には、尖閣が日本に属することが明記されています。このように中国共産党は尖閣諸島が日本の沖縄県に属することを公式に認めていたのです。


まとめ1――中国の弱点


 こうしてみると、中国側の主張の弱点は

(1)釣魚島領有の正当性を主張するには、サンフランシスコ平和条約の不当性を国際社会に認めさせなければならない
(2)1970年ごろまで領有権の主張をしてこなかったばかりか、尖閣が沖縄に所属することを認めていた

 この2点に集約されるような気がします。
 中国も孫崎氏も、ポツダム宣言やカイロ宣言は重視するのにサンフランシスコ平和条約を無視もしくは否定しています。
 中国はもともとそういう立場だから仕方ありませんが、外交官も務めた日本人がこの条約を否定・無視するのはいい度胸だと思います。結局はアンチアメリカ精神が言わせているのでしょうけど。
 たしかに、そもそもの原因は米国の曖昧な態度です。「施政権は日本に返還するが、主権の帰属については関知しない」なんて、正直「何言ってるかちょっと意味分かんない」って感じです。そしていまごろになって「東アジア情勢の不安定さが懸念材料だ」と他人事のようなセリフをどの口が言うんだと。

 「固有」の領土なんてものはない、という孫崎氏の指摘にはわたしも同意します。どの土地がどの国に所属するかなんて、時代によってコロコロ変わります。結局はそれが国際社会に認められているかどうかです。
 日本が台湾や朝鮮を領有したとき、国際社会はそれを認めていました。日本がそれを手放さなければならなくなったのは戦争に負けたからです。ぶっちゃければルーズベルトと蒋介石の取引の結果であり、不当とか妥当とかそんな倫理的な問題とは関係ありません。日本は負けたから戦勝国の要求に応じる、ただそれだけです。戦勝国でない相手の言いなりになる筋合いはありません。
 日本が尖閣を守り続けるには、不断の努力が欠かせません。それには、他国を説得できるだけの論理力と、万一の場合に敵対国を退けられるだけの防衛力が必要になります。

 孫崎氏は「尖閣問題を棚上げしろ」と主張していますが、「棚上げ」の意味がわたしにはイマイチよくわかりません。何をどうすることが棚上げなんでしょうか?
 現状を維持しろというのなら、日本のスタンスは以前から変わっていません。島に人を住まわせたり建造物を建てたりしているわけではありませんし。
 それに対して中国側は、日本が尖閣を国有化したのを機に強行的な態度に転じ、領空侵犯・領海侵犯を常態化させるようになりました。日本の海上保安庁が必死で抵抗しなければ、現状維持すらおぼつかないのが現状です。

まとめ2――中国を「悪者」にするために


 今後、日本はどうするべきでしょうか。
 一つには、中国の尖閣領有権の主張はサンフランシスコ平和条約の否定であり、戦後の秩序を破壊しようとするものだ、という訴えをアメリカをメーンターゲットとした国際社会に訴えてみてはどうでしょうか。
 中国は日本が軍国主義化しようとしているとことさら強調し、国連の敵国条項をちらつかせて日本を悪者に仕立てあげようとしています。しかし尖閣を日本に返還したのは米国の判断であり、現在尖閣で挑発的な行動を取っているのは中国であり、何より軍事力を膨張させているのが中国側であることはどの国の目から見ても明らかです。
 日本としては、米国の無責任な態度を放っておくわけにはいきません。戦後の国際秩序を乱す中国と、それに抵抗する平和主義国日本という構図を確立させ、米国が日本に協力せざるを得ない環境を整える必要があります。

 中国にしてみれば、尖閣問題は両刃の剣のようなものでしょう。人民の民族意識を鼓舞してガス抜きするにはもってこいだし、軍拡の大義名分に利用することはできますが、実際に紛争になったりしたら国内経済に響きかねません。
 中国経済が傾いたら人民の不満が爆発して中共の命取りになるでしょう。それに米国が中国を重視するのは市場として利用価値があるからであって、中国の経済が弱体化してただの不安定な軍事独裁国家になり下がったら、国益重視の米国は完全に日本側につくでしょう。中国への配慮が不要になったアメリカが「尖閣諸島における日本の主権を認める」と明言すれば、カイロ・ポツダム宣言を領有権主張の根拠とする中国側はどう反論できるでしょうか。

 何はともあれ、尖閣で不測の事態が勃発した場合、日本に求められるのは
(1)中国を撃退できるだけの実行力
(2)国際社会の理解を得られるだけの信頼
 の二つです。
 そのためには、中韓の展開するネガティブキャンペーンを丁寧につぶし、防衛力をきちんと整えながら、国際社会に平和的に貢献していかなければなりません。とくに、米国、ロシア、台湾、東南アジアなどの周辺国をしっかり味方につけておくことです。
 なお、韓国はどうせ中国の属国同然になるだろうから無視しても可。

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