纐纈厚「命がけの路上ストリップを嫌がる日本は腰抜けだ」

 戦後70年ということで、信濃毎日新聞の紙面は元旦号から自衛隊だの憲法だの集団的自衛権だの、政治的な記事が目白押しでした。ネトウヨとしては興味のあるテーマなので歓迎ですが、信毎が力を入れれば入れるほど一般読者をウンザリさせるのではないかといらぬ心配をしてしまいます。

 1月1日付9面の特集は「戦後70年 私たちはどこへ 第1部 揺らぐ自制①」。共同通信が配信しているようですが、「自衛隊 緊迫の尖閣」「日中 危険なせめぎあい」との見出しを掲げ、1954年に発足した自衛隊の歩みを振り返っていました。
 領空侵犯した旧ソ連の偵察機に対して空自のF4戦闘機が警告射撃を行った87年の事件を振り返るとともに、現在では仮想敵国が中国に変わり、昨年10月には空自と陸自が中国軍機の領空侵犯を想定した訓練を行ったことなどを紹介しています。
 以下、抜粋引用。

 関係者が「実戦さながらの緊迫感だった」という訓練。挑発とも言える中国の行動がその背景にある。
 翌11月の日中首脳会談は尖閣諸島領有や歴史認識問題など対立が深まる中で開かれた。
 「戦争で真っ先に死ぬのは自分たち」という自衛隊幹部は衝突回避に向け、会談で合意した緊急時のホットラインを含む海上連絡メカニズムの構築に期待する。
 だが防衛省首脳は「日本からボールを投げ続けているが、何の返答もない。開設できても、米中のように米側が電話をかけても誰も出なければ無意味だ」と突き放す
 警告射撃の経験を踏まえ、元パイロット【87年にソ連機に警告射撃をした空自戦闘機に搭乗していた人:引用者注】は問い掛ける。「後輩パイロットたちが警告射撃したり、その先の対応を迫られたりしないようにするのが、政治、外交の責任ではないか」
 かつて戦火を交えた日中が、戦後70年の今、尖閣という無人島をめぐって対峙している。
(敬称略:共同通信編集委員 石井暁)  (太字:引用者)


 文中の「突き放す」って表現に共同通信の下心を感じるのはわたしだけでしょうかね。悪いのは衝突回避に後ろ向きな中国なのに、まるで防衛省首脳が現場の自衛官を見殺しにしようとしているかの印象を読者に与えようとしているような。

 こうした記事を読んだ一般読者は当然、「ヒエー、尖閣諸島は一触即発じゃん。日本はどうすりゃいいの?」と不安を覚えることでしょう。
 特集はさらに「自衛隊60年 冷戦終結後3度の転換点と題して次のように解説しています(要約)。

 憲法違反かどうかの論議をひきずりながら米軍と一体化してソ連と対峙してきた自衛隊は、約60年の歴史の上で大きな転換点が3つあった。第一は89年の冷戦終結であり、これによって米国や国際社会は自衛隊に海外での活動を求めるようになった。第二は2001年の米中枢同時テロであり、自衛隊は初めて戦地に派遣されたが9条の制約で戦闘には加わらずに済んだ。第三にして最大の転換は14年の集団的自衛権行使容認の閣議決定であり、これが行使されれば自衛隊が米軍などとともに戦い、犠牲者を出したり外国人を殺傷したりする危険が高まる。さらに「国防軍」化すれば自衛隊は「専守防衛」のたがが外れ「普通の軍隊」に姿を変える。


 個人的には「普通の軍隊」で何が悪いの? と言いたいですね。だって世界中のほとんどすべての国は「普通の軍隊」を持っているんですから。サヨクの皆さんは日本の自衛隊が「普通でない軍隊」であることに誇りを感じているようですが、軍事費(防衛費)に年間545億ドル、世界6位(2014年度)の大金をつぎ込んでいる国が、憲法では「武力の行使」を永久に放棄すると謳っている事実はたしかに「普通」でない、はっきりいって「異常」です。そういう「異常性」が、中国など敵対性周辺国につけ込む隙を与え、日本の安全を脅かしているとわたしは思います。→尖閣戦争に利用される敵国条項と憲法9条

 これまで日本に「普通の軍隊」が許されなかった理由は、日本にそんなものを持たせたらまたぞろ「侵略」を始めるかもしれないと連合国側が懸念したからですよね。国際社会の要請によって自衛隊が実質的に「普通の軍隊」化することは、日本の平和主義が世界的に認知され、信頼が深まってきた証拠です。集団的自衛権の行使を容認した閣議決定も、特亜以外の国々には十分理解され、むしろ歓迎されています。

 でも、今回の特集記事はそうした側面には触れず、ひたすら安倍外交に警鐘を鳴らす纐纈厚・山口大副学長へのインタビューで締めくくっています。以下引用。

纐纈厚・山口大副学長に聞く 節目の年 平和戦略構築の元年に

―今の日本はどういう局面にあるか。
 「戦争を知らない世代が主要を占め国民の平和意識が揺らいでいる。米ソ冷戦や北朝鮮など周辺に脅威は常にあったが、中国の台頭による圧力感が『平和の歩みが正しかったのだろうか』という不信につながっている」

―戦後の歩みに問題があったのか。
 「日本は戦争に凝りて平和が欲しいと望んだが、軍備を厚くした。ボタンの掛け違いが今も続いている。集団的自衛権の行使容認などこわもての外交が失敗するのは歴史の示すところ。日中の対立はお互い知恵がなく、自己中心的な一国主義だからだ。率先して軍縮の方向性を示し、相手に軍備強化の口実を与えないのも平和戦略の一つだ」

―中国脅威論を前に自衛隊の自制が揺らいでいないか。
 「何が起きても拡大させない自制心があると信じたい。ただ自衛隊に権限が集中し、自衛官がハンドリングできる領域が増えた。だからこそ文民統制が大切だが、安倍晋三首相は軍備には軍備で応える冷戦構造の発想だ。政治家の劣化が深刻と言わざるを得ない」

―「新たな戦前」にしないためには。
 「政治が前のめりになって世論をあおらないことだ。戦場で硝煙のにおいをかがないと戦争が怖いと思えないなら、想像力の欠如でしかない。国民主体でアジア諸国と信頼を深め、平和共同体を追求する。『武器なき平和』は勇気と想像力が要るが、節目の年が新たな平和戦略を構築する元年であってほしい」



 前段で「尖閣で日中が衝突するかもしれない」「集団的自衛権の行使容認で自衛官に犠牲者が出るかもしれない」と脅し、後段で「だから日本は率先して軍縮をすべき」という結論に持ち込む。こういう流れに納得する読者はどれほどの割合を占めているんでしょうか。わたしには支離滅裂としか思えないんですが。
 纐纈先生はファシズム研究や近代戦争史の専門家とのことですが、言ってることは突っ込みどころ満載です。

>中国の台頭による圧力感が『平和の歩みが正しかったのだろうか』という不信につながっている

 わたしの実感もそのとおりです。ですからサヨク側識者にはその不信を解消するような言論が求められているのに、纐纈先生はその期待に応えてくれていません。「こわもて外交は失敗する」と決めつけていますが、その根拠も示さないまま。彼の著作を読めば分かるんですかね?

>日中の対立はお互い知恵がなく、自己中心的な一国主義だからだ。率先して軍縮の方向性を示し、相手に軍備強化の口実を与えないのも平和戦略の一つだ

 言ってることが矛盾してませんか? 中国が自己中心的な一国主義なら、日本が率先して軍縮したって影響はゼロでしょうし、むしろ相手を喜ばせるだけじゃないですか。それのどこが「戦略」なんですか?
 実際、これまで日本が防衛費をずっと横ばいのまま維持してきたのに対し、中国は驚異的な勢いで軍事費を増大させてきました(分かりやすいグラフは→たとえばここ)。その事実を知らないわけでもあるまいに、先生はどうしてこんなお花畑発言ができるんでしょうね。
 そもそも現在の中国が軍事的ライバル=目標とみなしているのは世界最大の軍事大国である米国ですから、日本がパンツを脱いで「ほら、アタシがこんな格好になったんだから、アナタもさあ早く♪」なんて言っても滑稽なだけです。サヨクの人たちの思考って、ある意味変態的なほどナルシズムですよね。

>『武器なき平和』は勇気と想像力が要るが、節目の年が新たな平和戦略を構築する元年であってほしい

 纐纈先生の主張を一言にまとめると、要するに「自己中心的な一国主義である中国の前でパンツを脱ぎたがらない日本は、勇気と想像力を持たない腰抜けだ」ってことですよね。「勇気と想像力」? 「無謀と妄想癖」の間違いでしょうに。日本に命がけの露出を強要し、尻込みするな!と罵るなんて、SMプレイにしても高度すぎませんか?

 こういう記事を読んでいるとなんだかもう、新年早々背筋がむずがゆくなりますね。こんなノリの特集がこれから1年間ずっと続くんでしょうか。いや、わたしは構いませんけど、一般読者が気の毒すぎる…。
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信毎「宇宙は第4の戦場でごみ問題が深刻だけど自衛隊なんか必要ない」

 2014年8月5日の信濃毎日新聞朝刊の社説は、宇宙監視部隊を取り上げていました。

宇宙監視部隊 つくる必要性はどこに

 宇宙の軍事利用をなし崩しに進めるつもりではないのか。疑念を抱かせる防衛省の方針が明らかになった。
 5年後をめどに、自衛隊に宇宙監視部隊を発足させるという。月内にも宇宙利用基本方針を改める。
 本当に必要な部隊か、吟味しなくてはならない。集めた情報は米軍に提供し、宇宙分野でも日米の連携強化を図る考えだ。防衛省は既に米政府に方針を伝えた。既定路線にさせるわけにはいかない。
 当面の主な任務としては、「宇宙ごみ」の監視を想定する。役割を終えた人工衛星やロケット、その破片など、宇宙を飛び交う物体のことだ。財団法人のレーダー施設などを文部科学省や宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で取得し、部隊が運用する。
 宇宙ごみは、確かに重大な問題だ。宇宙開発とともに急増し、地上から監視できる大きさのものだけでも2万個を超える。小さなものを含めると50万個以上とも推定される。猛スピードで飛んでいるため、人工衛星などにぶつかれば深刻な事態を生じかねない。
 とはいえ、自衛隊が乗り出さなければならないのか。JAXAなど別の組織で対応する方法もあるはずだ。防衛省は「徐々に活動領域を広げたい」と意欲を示している。宇宙分野へ進出する大義名分として宇宙ごみの問題を扱おうという思惑が感じられる。
 日本は、宇宙利用を「平和目的に限る」とした1969年の国会決議に基づき、長く非軍事原則を取ってきた。これを転じたのは2008年の宇宙基本法だ。「非侵略なら平和利用」との解釈で、防衛目的に関しては認めた。
 12年には宇宙航空研究開発機構の設置法を改め、平和利用条項を削除した。「情報収集衛星」との呼び方で偵察衛星を運用してもいる。宇宙の軍事利用へ、政府が着々と取り組みを重ねてきたことは見過ごせない。
 基本法で宇宙の軍事利用がどこまで容認されるかは、政府の判断による。確固とした歯止めはないのが実情だ。
 宇宙空間は、陸海空に次ぐ「第4の戦場」といわれる。新たな部隊が発足すれば、ここでも米軍との一体化が加速し、自衛隊の活動がずるずると広がっていく恐れがある。国民への説明や国会審議を尽くすべき問題だ。政府の一存で進めてはならない。

(太字は引用者)


 創設は5年後、しかも当面は民間のレーダーと望遠鏡を買い上げて空を眺めるだけの部隊に、信毎さんはどうしてそんなにビクビクしてるんでしょうかね。
 もともとロケットとミサイルは基本的に同じ技術ですから、宇宙開発と軍事は切っても切り離せない分野です。宇宙空間が陸海空に次ぐ「第4の戦場」なら、自衛隊がその分野を担当する部隊を作るのは当然のことじゃないですか。いわゆる「宇宙軍」は米国で1985年、ロシアで2001年に創設されています。中国は宇宙開発そのものを直接人民解放軍が担ってきましたからその歴史は60年以上ということになります。これらの国々は人工衛星を撃ち落とす技術開発も進めており、中国は2007年の人工衛星破壊実験で宇宙ごみ(スペースデブリ)をまき散らし、国際社会からひんしゅくを買いました。日本でも情報収集衛星を始め国や民間の衛星を数多く打ち上げており、それらの安全をトータルに維持する役割を自衛隊が担うのはごくまっとうな流れでしょう。そもそも長距離弾道ミサイルは大気圏外から飛んでくるわけですから、自衛隊が宇宙防衛も視野に入れるのは当然のことです。

 すでに宇宙が「戦場」ならば、いまさら「宇宙の軍事利用」なんて表現自体が的外れなのです。だって「空を軍事利用するな」「海を軍事利用するな」なんて言いませんよね。「宇宙ごみ対策なんかJAXAにやらせればいい」と言うのは「災害救助なんか消防署にやらせればいい」「機雷掃海なんか海上保安庁にやらせればいい」と言うのと同じです。

 信毎さんは「日米の連携強化」「米軍との一体化」にしつこく警鐘を鳴らしていますが、どうして日米が連携強化してはいけないのか、わたしにはさっぱり分かりません。とくに宇宙分野では日本と米国の技術格差は歴然としているのですから、日本は積極的に米国を頼らなければ手も足も出ないのです。韓国みたいに「中国とのつきあいも大事だから」というバランス意識があるのならともかく、信毎さんは一体なにを恐れているのでしょうか? きっと「米国にひきずられて日本が戦争に巻き込まれる!」ってことなんでしょうけど、宇宙を舞台にした戦争が起きるとしたら米中間もしくは米ロ間しかないわけで、もしそうなったら地理的に挟まれている日本は好むと好まざるとにかかわらず巻き込まれるしかないのです。

 ただ、この社説は政府方針にはっきりと反対してるわけではないんですよね。「吟味しなくてはならない」「国民への説明や国会審議を尽くすべき」と言っているだけで。そりゃそうでしょう、デブリ問題の深刻さは信毎さん自身が認めるほどなのに、日本におけるデブリ監視を担ってきたのは民間でした。JAXAの外郭団体の傘下のNPO法人だけに「第4の戦場」を任せといて大丈夫なわけがないのです。
 自衛隊が何か新しいことを始めるのはどんなことでも気に食わない、でも面と向かって反対できる大義名分もない。そういうもどかしさが、いわゆる「朝日新聞用語」的な言葉遣いににじんでいる、あいかわらずの信毎社説なのでした。

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