韓国の中央日報(2013.06.29)に掲載されたキムヒョンギ東京総局長のコラム。
http://joongang.joinsmsn.com/article/803/11936803.html (韓国語)
要約すると、「現在日本が問題視している特定失踪者たちは、北朝鮮に拉致されたことを示す文書証拠がない。にもかかわらず日本が従軍慰安婦の問題を「文書資料がない」と認めないのはダブルスタンダードではないか」という主張です。
こういう記事、どうして日本語版の方には載せないのかな。日本に向けたメッセージでしょうに…。
以下、記事を適当に翻訳。
【前略】
(慰安婦問題について)橋下大阪市長をはじめとする日本の保守右翼勢力の主張はこうだ。「河野談話には、『慰安婦を国家意思として拉致(あるいは人身売買)した』という表現はない。従って(慰安婦動員の)強制性を立証することはできない」。
つまり、軍や官憲が直接慰安婦を強制的に連れて行った文書などの証拠はない→軍の要請を受けた業者が甘い言葉で慰安婦を募集したのは認められるが、日本軍が強制連行したのではない→国による拉致ではないから強制性を認められていないという論理だ。
【中略】
ところで、2005年4月25日、日本の警察庁は次のように公式発表した。
「1978年に失踪した神戸市のラーメン店従業員田中稔(当時28歳)が、北朝鮮の指示を受けた店主の甘言で海外に誘い出された後、北朝鮮に送られたことを強く示唆する証言を得ることができた。よって我々はこれを北朝鮮による拉致事件と認める」。
田中は、暴行・脅迫によって連行されたのではなく、甘言によって誘い出された。直接実行したのは北朝鮮軍や官憲ではなくラーメン店主だった。もちろん北朝鮮の公文書などの証拠はなく、周辺の証言を認めただけだ。それでも日本政府は田中を北朝鮮による拉致と断定した。彼は現在、日本政府が公式に認めている拉致被害者17人のうちの一人だ。
田中問題を扱った日本政府(警察庁)の論理を慰安婦問題と入れ替えてみよう。甘言による(慰安婦)海外誘引、業者ではなく、指示を下した者(日本軍)の責任者であると考え、文書がなくても(慰安婦からの)証言を証拠として採用…。田中の拉致に規定したものと異なることが全くない。慰安婦は“日本軍による拉致”となり、慰安婦動員の強制性を否定する論理も虚構となる。
田中の拉致を否定するつもりは毛頭ない。ただし同様の基準で物事を見ようということだ。自国の悲劇だけが拉致ではない。それは歴史認識を論じる以前に、常識の問題だ。
参考 http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1372481381
読んでてなんだかむかついたので、生真面目に反論したくなりました。
ちなみに田中事件に関しては以下が詳しいです。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130519/kor13051910510003-n1.htmhttp://blog.goo.ne.jp/blue-jewel-7/e/1dbdf7a9958df5ae9b6cd12d1710fb2a 以下は、自分が読んだ従軍慰安婦問題に関する書籍やネット情報(主にウィキペディア)に基づいたわたしの見解です。
日本軍は民間業者に依頼して慰安婦を集めましたが、そのさい「女たちの意志に反してもいいから連れてこい」などという命令はしていません。むしろそういう強引な人集めを取り締まろうとしていたことは文書資料などからも明らかです(これを朝日新聞が「日本軍が募集に関与した証拠!」とブチ上げたんですよね)。
対して、北朝鮮は国策として多くの日本人を文字通り強制的に拉致したことがはっきりしており、金正日自身も事実関係を認めて謝罪しています。
田中事件もそうした経緯を背景に、複数の状況証拠(田中さんの母校に現れた不審人物の存在など)や元工作員の告白から、日本政府が拉致の疑いを認定したものであり、元慰安婦本人のあいまいな証言だけを針小棒大に解釈して膨張した慰安婦問題とは信憑性が全く異なります。
さらに、田中さんを日本から連れ出した工作員がラーメン屋を経営していたからといって「拉致を民間業者に委託した」と言えないのは明らかです。
田中事件が戦中の慰安婦募集と同列になるには、
北朝鮮が合法的な目的で外国人労働者を募集する
↓
民間の人材募集業者(ラーメン屋兼業w)が日本でおおやけに勧誘活動を行う
↓
応募者が定員に達しないため、業者が言葉巧みに田中さんを誘って北朝鮮に連れて行く
という流れが成立する必要があります。
しかし実際は北朝鮮が国家の意志に基づき、不法を承知で直接工作員に命じて田中さんを連れ出したことが疑われているのですから、合法的に業務委託した日本軍と同列に扱うことはできません。
また、元慰安婦のおばあさんたちは利害関係(賠償訴訟)の当事者であるのに対し、田中事件を告白した張龍雲(故人、兵庫県灘商工会元理事長)は、告白によって利益を得られる立場にあったとは考えられませんから、証言の信頼性も高いと言えます。
こうした違いも分からないまま(もしくはわざと無視して)、文書証拠がないことだけを取り上げて二つの問題をいっしょくたにするのは乱暴すぎます。まして、戦時中の問題は日韓基本条約締結時に解決したと日韓両国が合意しているのに対して、拉致事件は現在進行中の問題です。
>田中の拉致を否定しようとする考えは毛頭ない。ただし同じ定義で事物を見ようということだ。
この発言、韓国の皆さんが大嫌いな橋下市長が使った理屈と大差ないと思うんですが、いいんでしょうか。
「~しようとする考えは毛頭ない」なんて言い訳が、怒りに駆られた相手に対してはまったく通用しないことを、ほかならぬ韓国メディアの皆さんが身を呈して示してくれたじゃないですかww
テーマ : 従軍慰安婦性奴隷制問題
ジャンル : 政治・経済