「対話念仏」は平和な証拠

 「アジアの安全はアジア人民が守らなければならない」と演説した中国の習近平国家主席。アジアの少なからぬ国々が「アジア人民? 漢民族の間違いだろ」と内心ツッコミを入れたのではないでしょうか。発言した場が「アジア相互協力信頼醸成会議」というのも皮肉たっぷりでした。
 中国は、アジアから米国を締め出そうとすると同時に、ASEAN加盟国が南シナ海問題で結束するのも嫌がっています。トラブルを抱える相手を個別撃破しようという作戦は確かに現実的ではありますが、姑息のそしりを免れないでしょう。
 中国はすっかりアジアの盟主気取りですが、中国共産党の関心は結局のところ一党独裁体制の維持しかありません。経済成長も軍備拡大も海洋進出も、最終的にはその目的に行きつきます。要するに「自分勝手」なんですよね。

 アメリカだってジャイアニズムはかなりのものがありますが、彼らはそれでも「自由と民主主義を世界に広げる」という使命を掲げ、みずからその価値観を体現してきました。米国の優れた文化や科学技術は世界のリーダーの名に恥じないものでした。
 一方、「新たな大国」を自負する中国は、アジアの盟主として一体どんな価値観を提示しお手本になってくれるのでしょうか? ……残念ながら、なんにもありません。たんに経済力と軍事力がでかいってだけ。ジョセフ・ナイのいう「ソフトパワー」が決定的に不足、というよりマイナスになってるんですよね。一党独裁だし言論の自由もないし三権分立や法治主義も機能してないし民族弾圧はえげつないし汚職は蔓延しているし貧富の格差は甚だしいし空気も水も汚染されまくりだし二酸化炭素吐きまくりだし国民の民度は低いしテレビは反日ドラマばっかだしパクリや海賊版は横行しまくりだし…。まあはっきりいってろくでもない国です。

 そんな国が力をかさにベトナムやフィリピン相手にトラブルを仕掛け、その口で平然と「アジアの安全」をのたまうわけです。日本のサヨクさんたちも、これはなかなかかばいきれません。たとえば支那の毎日さんも、中国の厚顔ぶりを見かねたのか苦言めいたものを呈していました。

 「中国主席演説 アジアの安全を語るなら」と見出しの付いた信濃毎日新聞の5月23日付け社説の一部を紹介します。
 …(中国は)アジア重視戦略を掲げるオバマ米政権への対抗姿勢を鮮明にしている。地域の緊張を高めることにならないか、心配が募る。
 …(中国は)アジアの安全を語るなら、各国とのあつれきこそ解消すべきだ。一方的な行動はやめる必要がある。
 習氏は「領土主権や海洋権益をめぐる争いで、中国は一貫して平和的解決に力を注いできた」と強調したけれど、果たしてそうなのか。トラブルが続く国から「発言と行動が違う」といった反論が出るのは当然だろう。
 アジアの緊張を高めているのは中国であること、言動が一致しない中国は周辺国から信頼されていないことを認めています。
 では、こんな困った国を相手に日本はどうすればいいのでしょうか。そこからの論理展開はやっぱり信毎でした。
 日本の対応も問われる。安倍首相は集団的自衛権の行使容認など自衛隊の活動拡大で日米関係を強めようとしている。中国に軍拡の口実を与えることにならないか、安倍政権は政策転換の影響を見極める必要がある。

 はっきりとは言っていませんが、中国を刺激するから日米関係の強化には反対だ、集団的自衛権の行使容認などもってのほかだ、と言いたい気持ちが伝わってきます。
 この社説を書いた人は「口実」の意味が分かっているのでしょうか。口実とはただの「言い訳」です。口実の有無に関係なく中国が軍拡を続けてきた過去と、いまだ誰もそれを止められないでいる現実をどう受け止めるのでしょうか?

 社説が指し示す方向は、あいも変わらずの「対話教」です。

 日中は首脳会談を持てないままだ。こんな状態を続けることは双方にとって利益にならない。(中略)互いに対話の道を本気で探らなくてはならない。

 前段で、中国は信用できない迷惑国家であることを認めておきながら、そんな国とどう話し合えというのでしょうか。もし話し合えたとして、どんな合意が実現可能なのでしょうか?
 それらについて、信毎さん――に限らずサヨクの皆さんは何も答えてくれません。話し合え―なんでもいいから話し合え―と念仏のように繰り返すばかり。

 翌24日の社説「離島奪還訓練 力を誇示しあうだけでは」も同様でした。
 自衛隊が陸海空の合同で離島奪還訓練を行ったことに対し、真正面から反対とは言わないものの不満タラタラの様子です。合わせて防衛省が新設を計画している「水陸機動団」(米軍の海兵隊に相当)についても懸念を示していました。
 「専守防衛」を逸脱したり、周辺国との緊張を高めたりすることはないか。…中国との関係がますます厳しくなる可能性もある。…双方とも相手を刺激する行動は慎むべきだ。離島を守るには、奪還の能力にも増して、占拠されるといった事態が起きないようにすることが大事になる。日中の関係改善を急ぐときだ。けん制し合い、対話を遠ざけることがあってはならない。
 サヨクの皆さんって、中国や北朝鮮については「日本を攻撃してくるなんてありえない」「だから集団的自衛権も自衛軍も必要ない」とやたら楽観的なくせに、日本については「隙あらば他国を侵略しようとするに違いない」と決めつけたがるんですよね。いまどき日本がどの国を侵略するというのでしょうか? 民主主義が根付いている自国を信用せずに素行の悪い独裁国家を信頼するなんて、矛盾の極みとしか思えないんですけど。

 隣国との関係をむやみに緊迫化させるのは、外交戦略としてはもちろん下策です。でも隣国の顔色ばかりうかがい、ひたすらタイワタイワと唱える態度は対話というより怠惰です。軍拡を続ける中国を相手に日本が何の防衛策も取らなければ、対等の対話すら成り立ちません。

 サヨクの皆さんの主張には、「対立するくらいなら不戦敗の方がマシ」という思想がちらつきます。こういう極端な考え方って、旧日本軍の「生き恥をさらすくらいなら玉砕すべし」という価値観と似たところがありませんかね。
 旧日本軍は「名誉」を重んじるあまりに人命を軽視したわけですが、現在のサヨクさんがたの根底にあるのは日本という国への不信感、さらにいえば嫌悪感なんじゃないかと想像します。極右の安倍が牛耳るような日本は、一度中国に占領されて痛い目を見ればいい、それこそが先の戦争の償い&禊になる――そんなこと考えていませんか? わたしの妄想ですか、そうですか。
 いずれにせよ、サヨクの皆さんがタイワタイワと念仏を唱えていられるということは、日本とその周辺がまだまだ平和だっていう証拠なんですけどね。
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テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

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