毎日新聞の<定年老人ネトウヨ説>を検証する

 毎日新聞の元ソウル支局長、澤田克己氏の記事「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか」。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190518-00000003-mai-soci

 澤田氏は内閣府が行っている「外交に関する世論調査」や自身の経験などを根拠に「日本人の嫌韓は高齢層に多い」と指摘し、その理由として次のような仮説を示しています。

1980年代末から韓国にかかわってきた私の感覚では、「昔の韓国」のイメージが作用しているのではないかと感じています。80年代までの日本で韓国に持たれていたイメージは「軍事政権」というネガティブなものでした。

 それに対して90年代後半以降に成人した世代には、K-POPに代表されるような発展した国という明るいイメージしかありません。
・・・・・・
 そして「昔の韓国」は、経済的にも、政治的にも、日本とは比べものにならない小さく、弱い存在でした。それなのに、バブル崩壊後に日本がもたついている間に追いついてきて生意気なことを言うようになった。そうした意識が嫌韓につながっているのではないか。そう考えるのが自然なように思えます。
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さらに、定年退職した後に感じる社会からの疎外感というものも無視できないのかもしれません。



 澤田氏はこのように述べ、レベルの低いデマに踊らされた哀れな定年退職者の事例を紹介しています。

 高齢者は韓国が軍事政権だった頃やまだ国力が弱かった頃の記憶に縛られ、定年後の孤独からネトウヨ化しやすいのだろうという分析です。

 では、それが正しいのか、問題の世論調査のデータをグラフで見てみましょう。

韓国に対する親近感(2018年)
https://survey.gov-online.go.jp/h30/h30-gaiko/2-1.html


 澤田氏はまるで、「90年代後半以降に成人した世代」と「定年退職後の世代」との間に大きな格差があるかのような書きぶりをしていますが、グラフを見れば分かる通り、嫌韓度は年齢にほぼ比例しており、変化は連続的です。確かに50代と60代の間が開き気味にも見えますが、これは50代の嫌韓増加率が例外的に低めであるせいですから、定年退職の影響はほとんど見られないといっていいでしょう。
 いまの50代に親韓傾向が強いのは、ヨン様などの第一次韓流ブームの名残りではないかとわたしは想像しているのですが、どうでしょうか。

 澤田氏自身が「どこで線を引くべきかは難しいところですが」と言っているくらいなのですから、無理に線引きしなければいいのに。
 根拠のない印象論による一方的な線引きって、それ要するに「偏見」と同じですよね。
 記事でも触れられている、かつての<貧乏若者ネトウヨ説>と同じ轍じゃないですか。

 では、年齢が上がるにつれて嫌韓が増える本当の原因は何でしょうか。じつは、澤田氏の記事の中にそのヒントがありました。

・・・実は、国民交流はむしろ活発になっています。日本を昨年訪れた韓国人は過去最高の753万人、韓国を訪れた日本人も前年比27.6%増の294万人でした。
・・・・・・
訪日韓国人の増加については、日本との歴史問題に対する韓国世論の関心が高くないことがあるのだと思います。日本で持たれているイメージとは違うかもしれませんが、この点については昨年7月のコラム「挺対協は過大評価されていないか」 https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20180727/pol/00m/010/004000d でも書きました。そして日本側については、こうした問題に関心を持つ層と持たない層の分化が進んでいるのかもしれません。鮮明に出ているのが世代による違いです。



 澤田氏はこう述べて先の世論調査を紹介するのですが、あの世代変化を「分化」と呼ぶのはちょっとおかしいですよね。どうしても嫌韓を特定の世代に押し込めたいというバイアスを感じます。
 ただし、日本人の若い世代は日韓の歴史問題に関心がないために嫌韓に染まらずに済んでいるのだという澤田氏の指摘は、その通りだと思います。
 現在の日韓関係のゴタゴタは、ほぼすべてが歴史認識問題を背景にしていますから、日本の若い世代は日韓関係そのものに興味がないと言い換えることができます。
 考えてみれば、若い世代が社会や政治に興味が薄いのは日韓問題に限ったことではありません。ためしに、国政選挙の年代別投票率を見てみましょう。

2017年総選挙投票率
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/


 2017年10月の衆議院総選挙は、投票年齢が18歳からに引き下げられて最初の総選挙だったこともあり、10代の投票率が高くなっています。60代は職場のしがらみがなくなるため、70代以上は高齢化のために投票率が下がるものと想像されます。
 そうした事情はあるものの、全体として投票率は年齢にほぼ比例して上昇しており、世論調査の嫌韓グラフにそっくりです。年を重ねるごとに政治への関心が高くなり、韓国の傍若無人な反日ぶりを知って嫌韓になるのは、ごく自然な流れでしょう。
 だって、澤田氏がWEDGEで連載している記事を読んでいるだけで、韓国の無神経ぶりにむかっ腹が立ってきますもの。


 逆に、政治にも外交にも歴史にも興味のない人々が、互いの国の娯楽を消費しあったところで、国際問題は解決しません。何百万人もの韓国人が日本観光を堪能したところで、彼らが過激な反日団体にブレーキをかけてくれるわけではありませんし、韓流タレントや韓流コスメに熱中する日本の女子高生たちが、安倍政権の対韓外交に物を申すこともないのです。そのことは澤田氏自身が分かってるはずですけどねえ→こちら
 
 無邪気でノンポリな韓流ファンよりも、日夜韓国情報を収集してあーでもないこーでもないと議論しているネトウヨの方が、よほど日韓問題の解決に貢献できる可能性があるんじゃないでしょうか。

 親韓リベラルの皆さんって、日頃は「日本人はもっと韓国のことを学ぶべき」なんて説教を垂れておきながら、単なる消費行動を「交流」と言い換えて過大評価し、一方で自発的に韓国を学んで嫌韓になった人々を「孤独で哀れな連中」と決めつけたがる傾向がありますよね。
 韓国情勢については冷静に分析できる澤田氏すら、日本の世論については強引な「線引き」をしたがる不思議。

>それ以外にも、さまざまな要因があるのでしょう。もう少し取材を続けてみたいと思います。

 記事はそんな一文で締めくくられていますが、どうなることやら。


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