"to work"と"labor"の違いを英語音痴なりに調べてみる

 わたしは長野県出身なので、「戦前の日本はねえ、朝鮮や中国の人たちを強制連行して強制労働させたんだよ」と世間から聞かされて育ちました。
 とくに発電所や鉄道はそういう人たちの犠牲の上に出来上がったのだという"常識"が、県内には定着していたように思います。強制という言葉にはインパクトがありますから、きっと手枷足枷をはめさせられた奴隷みたいな人たちが、ムチで殴られながら働いていたんだろうなと漠然と思っていました。嫌韓ネトウヨに転向する2012年までは、そういう認識にとくに疑いも持たなかったのです。

 そういう経験からすると、「日本は強制労働なんかさせてない!」と言い張る日本政府に対し、信濃毎日新聞がダンマリを決め込んでいる現状が、とても不思議というか、時代は大きく変わったんだなあとしみじみ思います。今回の世界遺産登録に関連して信毎が行った主張といえば、2015年7月7日の「光と影共に学ぶ機会に」と題した社説で「負の歴史を学べる場をしっかりつくる必要がある」と言っただけ。「強制労働」という言葉の評価については踏み込んでいません。
 でも、信毎はつい最近(数年前)までごく当たり前に「強制連行」「強制労働」って言葉を使っていたように記憶しているんですがねえ。だとすれば、いま反論しておかないと過去の自分たちの報道が不適切だったと認めることにもなりかねないと思うんですが。そのうち図書館で過去記事を調べてみよう。

 "forced to work"と"forced labor"はどう違うのか。
 韓国は「違わねえよ、どっちも強制連行だよ!」と叫びますし、日本政府は「全然ちげーよ!」と言い張りますし。
 ネトウヨ界の大半はすっかりご立腹で、結果的に韓国政府と歩調を合わせて日本政府を叩く構図になっているのが面白いです。

 日本政府が forced to work にこだわったのは、強制労働に関する条約(Forced Labour Convention)に抵触するものではないということを主張したかったからだそうですが、韓国からは「国際裁判やILOの解説資料にも強制労働の被害を forced to work と表現している」という反論が出ています(7月7日の中央日報)。
 国際法についてはわたしのような素人が手を出せる問題ではありませんが、英語に疎いわたしでも二つの言葉のニュアンスの違いを理解できないものかと、ためしにWeblio英語翻訳を使ってみると、こうなりました。

forced to work

機械翻訳の結果

  1. 働くことを強いられます
  2. 職場に移動されます
  3. 働くために強制されます


「forced to work」に類似した例文

He works of necessity―He is under the necessity of working―obliged to work―compelled to work―forced to work―constrained to work.
彼はやむを得ず働くのだ - 斎藤和英大辞典

He was forced to work overtime.
彼は無理やり残業させられた。 - Tanaka Corpus

He is forced to work instead of going to school.
彼は学校に行かないで働かざるをえない。 - Weblio Email例文集

He was forced to work part-time to study abroad.
彼は留学するためにバイトをせざるを得なかった。 - Tanaka Corpus

forced to work

forced labor

機械翻訳の結果

  1. 強制労働
  2. 強制的労働
  3. 強制的労働組合


「forced labor」に類似した例文

forced labor
強制労働. - 研究社 新英和中辞典

Prohibition of Forced Labor
強制労働の禁止 - 日本法令外国語訳データベースシステム

Actual situations of forced labor
強制労働の実態 - Wikipedia日英京都関連文書対訳コーパス

d. Forced international movement…refugees and displaced persons, forced labor in wartime
d. 強制による国際移動…難民や避難民、戦時中の強制労働 - 経済産業省

forced labor
 なるほど。 forced to work  は日常生活の中でもよく使われ、「やむをえず働く」「親や上司に言われていやいややる」みたいなニュアンスも含みますが、 forced labor  はほとんど行政・法律用語であり、人権問題と密接に関連している印象です。とくに例文の差が分かりやすいですね。

 ロケットニュースに、米国人に forced to work のニュアンスを尋ねた記事が出ていました。
 内容を要約すると以下のようです。
http://rocketnews24.com/2015/07/08/605825/

30代男性
forced to work は「自分たちの意思通りにできたのなら働かなかった」という意味も含まれる。“forced” は「したくないことをさせられた」とのニュアンスがある。

30代女性
「force to ~」は普通に「無理やり~させる」という意味。「終電に乗り遅れて歩くしかなかった」など、「するしかなかった」という場合にも使われるが、炭鉱などで働かされる状況で使われるのなら「強制労働」と理解されるだろう。

30代女性
forced labor はとても深刻なケースだが、forced to work はもう少し日常的なケースでも使われる。「お母さんに無理矢理働かされた」という場合、forced to work は使えるが forced labor は言い過ぎ。forced labor は人権侵害 があるときだけ使われていると思う。


 この結果を受けて記事では

『forced to work』は外国人に『強制労働』と受け取られてしまうのかアメリカ人に聞いてみた / 全員が「受け取る」という結果に

 とのタイトルを付けていました。forced to work は広い意味で使われる言葉なので、その解釈は文脈に大きく左右されるということでしょう。

 思うに、 forced to work と forced labor の違いは、シャレになるかならないかということじゃないでしょうか。
 試しにそれぞれの言葉でGoogleの画像検索をかけてみると、イメージの差はけっこう歴然としています。

forced to work
forced to work2

forced labor
forced labor2

 forced to work の方は"Born to xx,Forced to work"という慣用句でかなりファッショナブルに使われているようですが、 forced labor の方は…ああ、こりゃ確かに強制労働だわw
 こうしてみると、日本側が「forced labor 呼ばわりされるくらいなら forced to work で妥協する方がまし」と判断した気持ちも理解できます。

 この画像検索というアイデアはリテラの記事を通じて得たのですが、執筆した野尻民夫さんは必死に「同じ画像だっていくつも出てきた!どっちも同じだ!」と主張しています。

http://lite-ra.com/2015/07/post-1256_3.html

 たとえば、『ひるおび!』の八代弁護士はこんな風に説明して、安倍政権をアシストしていた。
「検索で「forced labor」と入れると、奴隷のようなものが出てくるが、「forced to work」はブラック企業のようなもので、ニュアンスがまったくちがう」
 ブラック企業ならたいしたことないというような言い草も弁護士としてどうかと思うが、試しに「forced labor」「forced to work」を、それぞれ画像検索してみたところ、広い農場や収容所のようなところで大量の人が働かされている画像や、子どもが働かされている画像など、「forced labor」の検索結果と同一の画像が「forced to work」のほうでも、いくつも出てきた。


 うーん、ネトウヨのわたしとしては「いくつも」を「いくつか」に訂正要求したくなりますがね。

 こういう結果を見ると、「いったいどこが違うんだ!」という韓国側の主張も少し胡散臭くなってきます。

2015年7月7日朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/07/07/2015070700502.html

 外信記者や学者たちは「何が違うのか分からない」と言った。アジアで10年以上活動したイギリス特派員は「英語で記事を書き、本を書き、デスクの仕事をする私もニュアンスの違いが分からない。強さの差はない」と語った。韓国が望んだ「労働(labor)」と、日本が望んだ「働く(work)」は、後者の方が多少一般的な言葉であるだけで、どちらの方がもっと強いとか、弱いとかいうことではない。


 一方、聯合ニュースの報道では、マイク・ホンダ氏がまったく違う解釈を述べています。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2015/07/07/0400000000AJP20150707000800882.HTML

 ホンダ氏はこの日、聯合ニュースのインタビューに答え、日本は「forced lavor」(強制労働)という言葉を使うことを避け、代わりに日本語で「働かされた」という意味の「forced to work」を使っているとしながら、これを「はるかにおとなしい口語的な表現」と指摘した。


 こちらの方が、機械翻訳や画像検索、ロケットニュースの証言に近いですね。朝鮮日報が偏っているのかもしれませんし、米英ではニュアンスが異なるのかもしれません。わたしには判断がつきかねます。

 今回の件で不毛だなーと思うのは、この問題における「強制」および「強制労働」という言葉の定義がほとんど議論されていないことです。ロケットニュースの記事に登場してた米国人の皆さんが「強制労働」という日本語についてどれほど理解しているのか? ていうか大半の日本人だってよく分かってないんじゃないのかしら。

 朝鮮人労働者の場合、募集や官斡旋が強制だったかどうかについては当然ながらサヨク(&韓国)とウヨク(&日本政府)では真っ向から対立していますし、戦時徴用に至ってはウヨクの間でも「強制だが合法だ」という人(池田信夫)もいれば、「合法だから強制とは呼べない」という人もあります。さらにいえば、慰安婦問題で議論になった強制性の「広義」と「狭義」の違いとどう関連するのか(しないのか)もよくわかりません。

 要するに、強制性と違法性をイコールで結んでいいのかどうかすらよくわからない状況です。そんな状況のまま国際法や個人訴訟、日韓基本条約とその関連協定の解釈、日韓併合の合法性などをめぐる意見対立が覆いかぶさってくるのですから、ややこしいことこの上ありません。

 ま、とにもかくにも法的責任論をふっかけてきても相手にしないぞ、と断固とした態度を日本が示すのは意義あることだと思います。
 韓国の側にも、ちょっとダブルスタンダードな印象を覚えるんですよね。これまで慰安婦を「悲劇の性奴隷」として世界中に宣伝してきた一方で、男性同胞を「悲劇の男奴隷」として持ち上げている様子はありません。慰安婦や挺身隊のハルモニたちがまるで聖女のように扱われているのに対して、ずっと数が多かったはずのハラボジたちの影が薄いこと薄いこと。
 こういうところに、人権そのものより"利用価値"を重視する韓国の姿勢が透けて見える気がしてしまうのは、やはりわたしがネトウヨだからでしょうか。
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