共同通信「米軍は中国の弾道ミサイルを恐れて逃げ出すから沖縄に基地なんかいらない」

 信濃毎日新聞朝刊では月1のペースで、共同通信の配信による「安保のゆくえ」という連載をやっています。10月13日のそれは普天間飛行場の移設問題を扱っていました。

安保のゆくえ⑦
普天間飛行場
 岐路に立つ辺野古移設
米は永続的な使用視野


(引用、前略)
 これまでは日本防衛はアジア太平洋地域の平和と安定に在沖縄米軍が不可欠とされてきたが、今は沖縄の防衛も重要になってきた。中国の空母を含む大艦隊が東シナ海から太平洋に進出する際、沖縄本島と宮古島の間を通る。押さえ込もうとすると、沖縄の周辺海域が急所にならざるを得ない。
 実際、中国の海軍は従来の「沿岸・近海防衛海軍」から「外洋海軍」へ変容しつつあり、空軍も昨年11月、尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定した。台湾に向けた短距離弾道ミサイルを800発も保有する。その発射基地を移動すれば、沖縄も射程圏に入る。
 つまり沖縄に基地を抱えていることは、危険も伴う。米国はリスクを軽減するために基地を中国からより遠いところに分散して移す再編を進めている。


 引用していない部分も含めて全体を要約すると、移設先の名護市は市長も議会も移設反対派、強引にボーリング調査を進める政府は県民との間で亀裂を深めている一方、米軍は普天間飛行場の大規模修理に着手して当分はこのまま使い続ける腹づもり。中国の海洋進出は米軍に基地の分散化を進めさせるほど圧力となっているが、米軍はたとえ拠点を日本国外に移した後でも、有事の際にはいつでも沖縄を使えるよう施設を確保しておきたいと考えている――という内容です。
 紙面ではこれに続いて移設推進派と反対派、各一人ずつ識者の論説を掲載していました。

元防衛相 森本敏氏
南西防衛 米の力不可欠


(要約)
 中国が活動を広げているいま、南西諸島を含む日本領土の防衛のためには自衛隊にくわえ沖縄の米海兵隊の存在が欠かせない。辺野古は住民やジュゴンに配慮した設計がされている。普天間からの移設を迅速に進めるべきだ。


琉球大教授 我部政明氏
将来の兵力構成 協議を


(引用、前略)
 安倍内閣は尖閣諸島などをめぐり中国への対抗から、米軍の協力を確実にしたい。そのため、米政府の求める辺野古移設を強行に推進している。
 しかし、米軍が尖閣諸島を防衛する保証はない。海兵隊の沖縄駐留は尖閣防衛と関わりはない。沖縄県では移設反対の声が根強い。この現状で移設を推し進めても、米軍は代替施設を安定的に運用できない。移設を強行するほど、沖縄と本土との対立は深まる。他方、普天間飛行場の危険性も問題だ。その継続使用、辺野古移設とも県民の理解が得られない状況は、日米同盟の中核に穴があいた状態と言える。
 米政府は国防費の大幅な削減を余儀なくされ、その影響は在日米軍にも及ぶ。効率的な運用と技術の向上に伴い、将来、米軍は沖縄からハワイなどへ引く動きを加速させる可能性が高い。日米両政府間で2020年代以降を見据えた兵力構成をあらためて交渉すべきだろう。その結果、普天間の代替は沖縄に不要との結論となるはずだ。


 我部さんの主張を要約すると、
「米軍は尖閣なんか守ってくれないよ。それどころか金欠だから沖縄から出て行くだろう。代替基地なんかどうせ不要になるのに沖縄県民の神経を逆なでしてる日本政府はばか」
 ということじゃないでしょうか。どうせ米軍は助けてくれない、とは孫崎享氏も言っていたと記憶しています。ただしウケルさんの主張は「米国は金欠だから日本の思いやり予算をあてにして沖縄を利用してるだけ」というものでした(参考=こちら)。

 いざというときには米軍を過信しない方がいいという指摘については一理あるのかもしれません。オバマ大統領は基本的に自国に実害がない限り面倒臭いことには巻き込まれたくないというスタンスのようです。米国人が殺されなければイスラム国への空爆もやらずにいたかもしれません。尖閣が日米安保条約の適用対象だと明言はしていますが、いざとなったら「議会の承認がとれなかったわ、スマン」とか理由をつけて傍観を決め込むかもしれません。
 べつに日本は尖閣防衛を米軍任せにするつもりはないでしょうが、いざというときに米軍がケツ持ちしてくれるのとくれないのとでは大きな違いです。

 では、日本はどうすべきなのでしょうか?
 サヨクの皆さんはそっから先がないんですよね、いつも。少なくとも信毎の紙面でサヨク論者がまともな提言をしているのを読んだ記憶がありません。
 在日米軍に頼らなくても済むように自衛隊を増強しろということなのか、中国にはどうせ勝てっこないから尖閣諸島なんかくれちまえということなのか、いっそ争いのタネである尖閣諸島を爆破して海の底に沈めちゃえというのか。
 その妥当性は別として、具体的なビジョンを示してくれないと評価のしようがありません。彼らが言うのはいつだって
「9条さえ守っていれば攻撃してくる国なんかあるはずない」
「外交努力で未然に防げ」
「対話の努力を怠るな」
 ……いまどきこんな発言を真に受ける人がいるとしたら、よほど海外ニュースに疎い人ですよね。いまも昔も対話だけで解決しない問題は山ほどあるし、国益のためなら多少の国際的評価の下落はやむなしと考えるのが国家としては普通です。中国は「カネさえあればどんな国でも黙らせられる」と思い込んでいる節がありますし、アメリカが「世界の警察」の座から降りようとしている現状下であればなおさらです。

 共同通信が言うように、米国が中国の弾道ミサイルを怖れて在日米軍を縮小させようとしているのなら、それって日本にとってすげーヤバイことじゃないですか。自衛隊だって標的になりうるってことですもんね。沖縄本島にミサイルがブチ込まれる事態になれば、完全に第二次日中戦争の勃発じゃないですか。キャー。
 でも冗談抜きで、万一に備えて迎撃システムの拡張や敵基地への先制攻撃を真面目に議論してもおかしくないレベルですよね。

 ネトウヨのわたしは、今回の記事を読んで「いざというときに米軍に頼らなくてもいいように、日本はやっぱり防衛力を強化しなきゃいけないんだな」と感じました。
 でもこれを書いた共同通信や載せた信毎の意図はどうなんですかね? 読者が「なんだ、米軍はじつは日本から出て行きたがっているのか、そりゃめでたいじゃないか。沖縄県民、ガンバ!」なんて思ってくれると期待していたんでしょうか。
 常識的に考えて、そんな読み方をする人はよほど変わった人だと思いますが、少なくとも我部さんはそれに近いスタンスのようでした。
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